自治体の生成AI導入状況【2026年最新】総務省調査でみる活用事例と課題

都道府県と指定都市では、生成AIの導入率がすでに100%に達しています。一方で、その他の市区町村では半数に届いておらず、導入が進んでいる自治体とそうでない自治体の差が大きいのが現状です。今後AIの普及が進んでいくことは間違いありませんので、すべての自治体で有効に活用してほしいと考えています。

この記事では、総務省が2026年4月に公表した最新調査(令和7年度・全1,788自治体が回答)をもとに、自治体の生成AIの導入率、実際の活用事例、業務削減時間の実例、導入の課題、ガイドラインの策定状況を、一次資料(調査を実施した機関が自ら公表している資料)のデータに限定してまとめました。自治体で導入を検討している方の稟議資料にも「自治体はどこまで進んでいるのか」を知りたい企業の方の比較材料にも、出典つきでそのままお使いいただける内容にしています。

最終更新日:2026年7月29日(掲載データは令和7年10月31日時点の調査です。次回調査の公表後に数値を更新します)

自治体の生成AI導入率(早見表)

まず、最新調査の結果を一覧にまとめます。

項目数値備考
導入済(都道府県)100%47団体すべて
導入済(指定都市)100%20団体すべて
導入済(その他の市区町村)45.6%実証中・導入予定・検討中を含めると約88%
ガイドライン策定済853団体未策定(737団体)を初めて上回る

出典:総務省「自治体における生成AI導入状況(令和7年度)」(令和7年10月31日時点の調査。1,788団体すべてが回答)

3年間でどう変わったか

導入済の割合を過去の調査とくらべると、伸びの速さがわかります。

団体区分令和5年調査令和6年調査令和7年調査
都道府県51%87%100%
指定都市40%90%100%
その他の市区町村9%30%45.6%
自治体の生成AI導入率の3年推移の棒グラフ。都道府県は51%から100%、指定都市は40%から100%、その他の市区町村は9%から45.6%に増加

その他の市区町村も9%→30%→45.6%と毎年大きく増えていますが、都道府県・指定都市との差はまだまだあります。導入の課題については後半で解説します。

自治体は生成AIを何に使っているか(活用事例ランキング)

導入している自治体の活用事例を件数の多い順に見ると、次のとおりです(複数回答)。

順位活用事例件数
1あいさつ文案の作成1,292
2議事録の要約1,131
3議会の想定問答の文案の作成1,085
4メール文案の作成1,052
5企画書案の作成997
6住民等からの質問に対する回答案の作成848
7ローコードの作成(マクロ、VBAなど)799
自治体の生成AI活用事例の件数ランキングの横棒グラフ。あいさつ文案の作成1,292件が最多で、議事録の要約、議会の想定問答、メール文案、企画書案と続く

上位は「文章を作る仕事」に集中しています。あいさつ文・議事録・想定問答・メール・企画書と、対象は違っても、どれも文章作成の効率化です。これは企業での使われ方(文書作成・要約が最上位)とほぼ同じ構図で、組織の種類を問わず生成AIの入り口は文章業務だということがわかります。

今年から「データの分析・分類」が登場

今回の調査から活用事例の選択肢に「データの分析・分類」が加わり、初年度で560件の回答がありました。文章を作るだけでなく、データを読み解く仕事にも使われ始めています。使い方が「文章作成の効率化」から次の段階へ進み始めた変化と言えるでしょう。

どれくらい効果が出ているか(業務削減時間の実例)

総務省の資料には、削減時間の実例が載っています。

活用事例削減効果自治体(人口規模)
あいさつ文案・メール文案の作成文章作成業務が月190時間→51時間(73%削減)滋賀県野洲市(5.1万人)
議会の想定問答の文案作成過去の答弁を参照させる仕組み(後述のRAG)で、150問超の質問の最大96%で活用。深夜残業も減少宮崎県日向市(5.8万人)
計画案・企画書案の作成広報誌の情報収集・企画書作成で年間288時間(47%)の削減見込み愛知県豊川市(18.6万人)
ローコードの作成マクロ(Excelの処理を自動化するプログラム)の自動生成で累計約4,250時間の削減見込み愛知県日進市(9.4万人)
データの分析・分類2か月の実証実験で103時間削減千葉県習志野市(17.5万人)

出典:総務省「自治体における生成AI導入状況(令和7年度)」6ページ、および同「生成AI導入団体の詳細情報

注目したいのは、人口5万人前後の市でも大きな成果が出ていることです。費用面でも、次に見るとおり無料の範囲で始めている団体が最も多く、規模や予算が小さいから使えないという領域ではなくなっていることがわかります。

また、削減できた時間の使い道としては「業務プロセス改善など内部事務の改善」(637件)に続き、「住民対応時間の確保など住民サービスの向上」(622件)が挙げられています。効率化の先が住民サービスに向かっている点は、自治体ならではの結果です。

導入コスト・ランニングコストはいくらかかっているか

費用のデータも調査に含まれています。導入コスト(初期費用)は「0円」が705件と最多で、年間のランニングコストも「0円」が468件と最多でした。金額帯別の件数は次のとおりです。

金額帯導入コスト年間ランニングコスト
0円705件(うち366件は検討中で「不明」)468件(うち340件は検討中で「不明」)
1〜50万円262件130件
50万〜100万円45件262件
100万〜150万円28件87件
150万円超89件225件

出典:総務省「自治体における生成AI導入状況(令和7年度)」19ページ

ひとつ注意があります。この調査では、導入検討中でコストがまだ分からない団体も「0円」と記入する形になっており、導入コストの705件のうち366件、ランニングコストの468件のうち340件がその「不明」の回答です。「0円」をそのまま「無料で運用している」と読むことはできません。それを差し引いても、無料の範囲で始めている団体が最も多いことに変わりはありませんが、割り引いて見る必要があります。

有料の場合の相場感としては、導入コストは50万円以下(262件)が中心です。ランニングコストは年50万〜100万円(262件)が最も多く、年150万円以下までで有料回答の約7割を占めます。1,000万円を超える回答は導入・ランニングとも20件余りにとどまります。

コストの中身について、総務省の注記では、導入コストにはシステムの初期設定・環境構築、LGWAN(自治体専用の閉じたネットワーク)の設定費用、職員研修の費用、ライセンス費用、業務委託料などが含まれるとされています。ランニングコストはサービス利用料やライセンス料が中心で、月額・年額の定額のほか、アカウント数や利用量(トークン)に応じた従量課金までさまざまな形態があります。

導入の課題:「導入するか」から「使いこなせるか」へ

導入における課題は、回答の多い順に次のようになっています。

  1. AI生成物の正確性への懸念がある
  2. 取り組むための人材がいない、または不足している
  3. 要機密情報流出の懸念がある

前年の調査では「人材がいない・不足している」が1位でしたが、今回は「正確性への懸念」が1位に入れ替わりました。導入前の「誰がやるのか」という課題から、導入後の「出力される内容をどこまで信頼してよいのか」という課題へ変化してきたと読み取れます。

人材面でも変化があります。人材確保の取り組みは、前年まで「取り組みをしていない」という回答が最も多かったのですが、今回初めて「職員の育成(研修会の開催など)」が最多になりました。外部の専門人材を連れてくるのではなく、いまいる職員が使えるようになるための研修に多くの自治体が動き始めています。

ガイドラインの策定状況と参考にできる指針

生成AI利用のガイドライン(使ってよい業務・入力してはいけない情報などを定めた社内ルールにあたるもの)は「策定済」が853団体となり、初めて「未策定」(737団体)を上回りました。前年は策定済647団体・未策定1,004団体でしたので、この1年でルール整備が一気に進んだことになります。生成AIを導入済の団体に限ると、81%が策定済です。

これからガイドラインを策定する場合は、公的機関が公開している指針が参考になります。

自治体はどんな生成AIサービスを使っているか

導入しているサービスの上位4つは「QommonsAI」「LoGoAIアシスタント」「自治体AI zevo」「exaBase生成AI for 自治体」と、いずれも自治体専用のサービスでした。前年の調査ではChatGPTの無料版が2位に入っていましたが、汎用のサービスから自治体の業務やセキュリティ要件にあわせた専用サービスへの移行が進んでいます。

カスタマイズの方法では、RAG(生成AIのモデルはそのままで、マニュアルや議事録など自組織の資料を参照させて回答させる仕組み)が329件と大半を占めています。参照させている資料は、マニュアル、議会会議録、法令の順に多くなっています。議会答弁の作成に過去の答弁集を参照させるなど、自治体の仕事の型とRAGの相性のよさが表れた結果です。

※本記事は各サービスの比較や推奨を目的としていません。調査結果の紹介にとどめます。

民間企業とくらべてどうか

都道府県・指定都市の導入率100%という数字は、企業の統計とくらべると際立ちます。総務省の情報通信白書(2024年度調査)では、生成AIの活用方針を定めている日本企業は49.7%、帝国データバンクの調査(2026年3月)では業務で活用している企業は34.5%です。

ただし、この比較には注意が必要です。自治体の「導入済」は組織として導入していれば一部の部署だけでもカウントされる一方、企業調査は「方針を定めているか」「業務で活用しているか」を聞いており、質問の内容が揃っていません。この結果をもって単純に「自治体のほうが進んでいる」と結論づけることはできませんが、少なくとも都道府県・指定都市レベルでは、生成AIを使うこと自体はもう前提になっているとは言えそうです。

企業側の利用率・普及率のデータは、別記事「生成AIの利用率・普及率まとめ【2026年最新】日本と世界の利用者数データ」で詳しく解説しています。あわせてご覧ください。

自治体の生成AI活用は、都道府県・指定都市では導入率100%に達した一方、その他の市区町村では45.6%と、団体間の差が大きいのが現状です。そして課題の中心は「導入するかどうか」から「正確性を見極めて使いこなせるか」「使える職員をどう育てるか」へ移り、人材確保の取り組みでは職員研修が初めて最多になりました。

今後AIの普及が進むことは間違いありません。すべての自治体で有効に活用され、削減された時間が住民サービスに向かっていくことを願っています。

※企業側のデータは「企業の生成AI導入率まとめ【2026年最新】規模別の割合・課題を調査データで解説」にまとめています。

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