「ルールがないから、社員に生成AIを使わせられない」「情報漏洩が心配」。研修の場でよく聞く悩みです。かといってルール作りを一から始めると、担当部署の調整だけで数ヶ月かかることもあります。その間に現場では、個人のスマホで勝手にAIを使う「野良利用(シャドーAI)」が静かに進みます。ルールがなく放置しておくのは、企業にとってリスクの高い状態だと言えます。
社内ルールのたたき台づくりは生成AIが得意な作業です。この記事では、生成AIと対話しながら自社用のルール草案を作り、関係部署の確認に回せる状態にするまでの手順を紹介します。所要時間は1時間程度です。
はじめに:この記事で作るのは「たたき台」です
まず前提です。ここで作るのは完成版の規程ではなく、社内で議論を始めるための草案です。最終的には経営・法務・情報システム部門の確認が必要ですし、就業規則など他の規程との整合性もチェックする必要があります。
それでも、まったくゼロの状態から会議で議論を始めるのと、具体的なたたき台を囲んで議論するのとでは、展開の速さがまったく違います。そのたたき台づくりまでを生成AIで時短する、というのがこの記事の狙いです。
ルールに最低限入れるべきは次の3点です。
- 入力してはいけない情報(顧客名・個人情報・未公表の数値など)
- 利用できるツールと環境(会社として認めるツールはどれか)
- 生成物のチェック体制(事実確認と、社外に出すときの確認手順)
手順1:自社の状況をメモに整理する
プロンプトを入力する前に、次の4点を簡単にメモします。ここが具体的なほど、自社に合った草案が出てきます。
- 業種と従業員数(例:研修サービス業・50名)
- 生成AIを使いたい業務(例:文書作成・企画のたたき台・データ整理)
- 会社として使わせたいツール(例:会社契約の◯◯のみ)
- いま心配していること(例:顧客情報の入力・生成物の誤り)
手順2:草案を生成させる
整理したメモを使って、次のように指示します。
あなたは中小企業のIT管理の実務に詳しいコンサルタントです。以下の会社向けに、生成AI利用ルールの草案を作成してください。
・会社:従業員50名の研修サービス業
・用途:文書作成、企画のたたき台づくり、データ整理
・利用ツール:会社契約の◯◯のみ
・構成:目的/利用できるツール/入力してはいけない情報/生成物の扱い/困ったときの相談先
・分量はA4で1〜2枚。現場の社員が読んでわかる言葉で書いてください

ポイントは、構成をこちらから指定することです。構成を指定せずAIに「ルールを作って」と丸投げすると、大企業向けの網羅的な規程のような、自社の実態に合わない草案が出力されることがあります。
手順3:自社の実態に合わせて詰める
1回の出力で終わりにせず、修正指示を重ねて自社用に近づけます。このような修正プロンプトを入力してみましょう。
・「入力してはいけない情報」に、当社で実際にありそうな例をそれぞれ3つ足してください
・禁止ばかりにならないよう、「推奨する使い方」の節を追加してください

2つ目の指示が特に重要です。禁止事項だけが並んだルールは、社員に「使わないほうが安全」と受け取られ、せっかくルールを作っても活用が進みません。「まずはここから使ってみてほしい」という推奨の使い方をセットで示すことで、ルールが積極的なAI活用を促すことにもなります。
なお、研修でルール作りの話題になると、必ずと言っていいほど議論になるのが「どの部署がルール・ポリシーを作るのか」という点です。総務部門なのか、IT部門なのか。ここが決まらないまま時間だけが過ぎてしまうことも少なくありません。たたき台が先にあると、この論点も「まずはどちらがこの草案を引き取るか」という具体的な話に変えられます。
手順4:関係部署への確認に回す
たたき台ができたら、社内の関係者に確認を依頼する準備までAIにサポートしてもらってもよいでしょう。
この草案を社内の関係部署に確認してもらいます。法務・情報システム・経営層のそれぞれが確認すべきポイントを、箇条書きで挙げてください
出てきた確認ポイントを添えて草案を回すと、確認する側も初稿案のどこを見ればよいかがわかり、各所のレビューが速く進みます。
作ったルールを形骸化させないためのポイント
最後に、運用の注意点です。
- 教育とセットで展開する:文書を配るだけでは浸透しません。短時間でも、実際にツールを触りながら「やってよいこと・いけないこと」を体験する場をセットにします
- 見直しの時期を決めておく:生成AIのツールや機能の変化は速く、半年前のルールがすでに実態と合わないことがあります。「半年に1回見直す」と草案に書いておきます
- 相談先を明記する:「迷ったら◯◯に聞く」の一行があるだけで、社員が自己判断で危ない使い方をすることを減らせます
生成AIの社内ルールのたたき台を1時間で作る手順を紹介しました。ルールがないからAIを使わせられない状態で止まっているのがいちばんもったいない状態です。たたき台づくりはAIに任せ、人間は自社の実態に合わせる議論と現場への注意喚起・利用促進に時間を使いましょう。
管理職の生成AI活用の全体像は、「管理職の生成AI活用 完全ガイド」で紹介しています。
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