生成AIを商談の練習相手にする手順

大事な商談の前に練習をしておきたい。そう思っても、相手役を上司や同僚に頼むのは時間の調整が必要で相手の時間も奪います。気恥ずかしさがあり依頼できない方もいます。結局ぶっつけ本番で商談に臨んでいる、というケースも現場では多いようです。

生成AIを使うと、商談の練習(ロールプレイング)を一人で何度でも行えます。この記事では、顧客役の設定から、練習の実施、講評の出力、つまずいた場面だけのやり直しまでを、プロンプト付きで紹介します。ChatGPT・Claude・Gemini・Copilotなど、どのAIツールでも応用できます。

手順1:顧客役を設定する

最初に、生成AIに顧客役を演じてもらうための設定を伝えます。ポイントは、商談相手の「業種・立場・検討状況・態度」の4点を具体的に指定することです。

あなたはこれから、私の商談練習の顧客役を演じてください。

・顧客の設定:製造業(従業員100名規模)の総務部長。業務効率化ツールの導入を検討中だが、コストに慎重で現状のやり方を変えることへの抵抗感もある
・私の設定:このツールを提案する営業担当者
・進め方のルール:
 ・1回の発言は3文以内にしてください
 ・こちらの提案に対して、疑問や懸念を遠慮なく出してください
 ・私が「ロープレ終了」と言うまで、顧客役を続けてください

準備ができたら、商談の冒頭から始めます。

顧客役を設定してロールプレイングを開始する画面(イメージ)

「1回の発言は3文以内」の指定が重要です。プロンプトにこの記載が無いと、顧客役であるAIが一度に長々と話す不自然な展開になることがあります。実際の商談のテンポに近づけるために、発言は短く区切っておきます。

顧客の設定は、実際に商談を控えている相手に寄せて書き換えてください。「コストに慎重」「他社ツールを利用中」「決裁権はあるが現場の反発を気にしている」のように、あなたが苦手とするタイプの顧客を設定しておけば、さらに練習の効果は高くなります。

個人のお客様が相手の営業でも、設定の作り方は同じです。たとえば不動産売買なら次のような設定になります。

・顧客の設定:戸建てへの住み替えを検討している40代の夫婦。予算に上限があり、駅からの距離と学区を重視。ほかの不動産会社の物件も見ており、即決には慎重
・私の設定:この夫婦に物件を提案する不動産会社の営業担当者

さらに具体的なお客様をイメージし顧客設定を詳細に書き込むと、より実体に近い練習になります。

手順2:商談を進める

設定をAIに伝え、実際の商談と同じようにあいさつから会話を始めます。

生成AIの顧客役と商談のやり取りを進める画面(イメージ)

顧客役であるAIは、あなたの説明に対して「それは御社のツールでなくてもできるのでは?」「初期費用が高い印象です」のような疑問や懸念を出力してきます。答えに詰まっても、そこで止まらずに最後まで進めてください。詰まった場面こそがこの練習で得られる収穫です。

キーボードで文字を打つのではなくリアルに話す練習をしたい場合は、スマホの音声入力を使って発言する方法もあります。ChatGPTやClaudeではPCでも音声対話が可能です。声に出すことで、本番により近い練習になります。

手順3:講評を出力させる

商談の練習がひととおり終わったら、ロープレを終了して講評を出力させます。

ロープレ終了。ここまでのやり取りについて、顧客役の立場から見た講評をお願いします。
・良かった点
・改善したほうがよい点
・改善点について、実際の発言をどう言い換えればよいかの例
の3つに分けて出力してください。

ロールプレイングの講評が出力された画面(イメージ)

上司や同僚が相手のロープレと違い、生成AIの講評には遠慮がありません。また、AIにはあなたのこれまでの実績や行動によるバイアスもありません。「導入事例を聞かれた際の回答が抽象的でした」のようなAIによる中立的な指摘が、そのまま次の練習の材料になります。言い換え例まで出力させておくと、指摘を具体的な行動に移しやすくなります。

手順4:つまずいた場面だけをやり直す

講評を受けたあと、商談全体をもう一度やり直す必要はありません。詰まった場面だけを指定して、部分的に練習し直すこともできます。

先ほどの「初期費用が高い」と指摘された場面に戻って、そこからもう一度お願いします。顧客役の設定はそのままで、少し厳しめの反応にしてください。

つまずいた場面だけをやり直す画面(イメージ)

苦手な場面だけを繰り返し練習できるのは、人間が相手のロープレにはない利点です。同じ場面を難易度を変えて何度か繰り返すと、切り返しの引き出しが増えていきます。納得できる対応ができるまで練習しましょう。

そのまま使えるプロンプトの型

この記事で使ったプロンプトを、貼り付けて使える形でまとめます。

顧客役の設定用

あなたはこれから、私の商談練習の顧客役を演じてください。顧客の設定:(業種・規模・役職・検討状況・態度を記入)。私の設定:(あなたの立場と提案する商材を記入)。進め方のルール:1回の発言は3文以内/こちらの提案への疑問や懸念を遠慮なく出す/私が「ロープレ終了」と言うまで顧客役を続ける。準備ができたら、商談の冒頭から始めます。

講評用

ロープレ終了。ここまでのやり取りについて、顧客役の立場から見た講評を「良かった点」「改善したほうがよい点」「改善点の言い換え例」の3つに分けて出力してください。

注意点:AIの顧客役は本番の予行演習ではない

生成AIの顧客役はそれらしい反応を出力しますが、実際の顧客とまったく同じ反応をするとは限りません。この練習で身につくのは「想定問答の正解」ではなく、疑問や懸念を向けられたときに落ち着いて切り返す場数です。本番の商談では練習どおりに進まない場合があることも念頭に置き、相手の話を聞くことに集中してください。

※顧客役の設定に、実在の会社名・担当者名や、自社商材の社外秘の情報(原価・値引きの下限など)は入力しないでください。この記事の手順は「製造業の総務部長」のような一般的な設定で問題なく動きます。個人のお客様が相手の場合も同様に、実在のお客様の氏名・家族構成・資産状況などは入力せず、「40代の夫婦」のような一般的な設定に置き換えてください。あなたの会社で生成AIの利用ルールがある場合は、そちらが最優先です。

生成AIを商談の練習相手にする手順をお伝えしてきました。顧客役も講評もAIに任せ、人間は苦手な場面の切り返しを繰り返し練習することに集中する。この分担によって、商談の練習は「相手と時間を確保して行う取り組み」から「商談前に一人でできる準備」に変えることができます。

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